意外と知られていないオートマオイル(ATF)のお話
- Kendall Lab
- 2021年6月28日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年11月26日
皆さんこんにちは!つい先日、愛車の走行距離が10万kmを超えたKendallラボ担当・ケン太です。
10万kmを超えた記念(?)に、久しぶりにオートマオイル(以下、ATF)を交換しました。
長い間交換していなかったため、案の定ATオイルパンにはスラッジや金属粉が堆積していましたので、ATオイルパンの清掃とATストレナー(エレメント)の交換も整備士さんへお願いしました。
唐突ですが、皆さんはATFの交換をどうなさっていますか?
一般的にATFを交換するタイミングは、中古車を買ったとき、定期点検のとき、車検のときなどでしょうから、私のように整備士さんにお願いされている方がほとんどだと思います。
ATFの交換は詳しい専門知識はもちろん、専用の機器や設備が必要となりますので、個人レベルで「気軽にDIY」というワケにもいきませんね。
というわけで、今回のテーマはケンドルの十八番でもあるオートマオイル(ATF)についてお話ししていこうと思います。

ATFとエンジンオイルの「大きな違い」
エンジンオイルとATF、これらはどちらも同じ「自動車用潤滑油」ではあるのですが、用途以外に大きな違いがあることをご存知でしょうか?
エンジンオイルは、おもにAPI(アメリカ石油協会)が主導権を握り、評価方法や規格を作り上げ、世界規模で管理・運営しています。
一方、ATFもオイルではありますが、API(アメリカ石油協会)とは関係がありません。
ATFは「自動車メーカーが主導権を握っているオイル」であるといえます。ここがエンジンオイルとATFで大きく異なる点です。
ATFの色はどうして「赤色」なの?
皆さんご存知かもしれませんが、ほとんどのATFは「赤色」です。
しかし、なぜ赤色が多いのでしょうか。
もちろん「他のオイルと識別しやすくするため」であることはいうまでもありません。しかし、それならばもっと個性を出すために他の色であってもいいはずです。オイルは潤滑油専用の染料で着色できますから。
ATFがなぜ赤いのか?を端的にいってしまえば、それは「GMの赤」といっても過言ではありません。
現在でもATFにかかる基礎研究や特許技術など、無形資産では他の自動車メーカーを圧倒するアメリカのゼネラルモーターズ社。
ATの開発とその潤滑油であるATFの開発に関しては、築き上げてきた歴史の深みが違います。
彼らが作り上げてきた歴代のATF規格「DEXRON-II」「DEXRON-III」「DEXRON-VI」などの「DEXRON(デキシロン)」シリーズは、色までしっかりと規格化されており、一定範囲内の赤色に着色しなければならないと決められています。
市場には「濃い赤色」のATF、「薄い赤色」のATFが存在していますが、これは赤色の着色に幅があるためです。現在もDEXRON(デキシロン)ライセンスが継続されているもの、既に消滅しているものを含め、このDEXRON(デキシロン)規格による流れが、世界中のほとんどのATFが赤い理由といえるでしょう。
幻となってしまったATFの日米共通規格
最後に、エンジンオイルでは馴染みのある「ILSAC(国際潤滑油標準化認証委員会)」についてのお話です。「ILSAC GF-5」や最新の「ILSAC GF-6」については、エンジンオイルに強いこだわりを持つオイルマニアの皆さんならご存知のことと思います。
このILSACの枠組みで、ATFについても日米共通規格いわゆる「ILSAC ATF規格」なるのものが、日米の専門家達の間で長年にわたって議論されていました。
しかしながら、最終的に意見統一には至らず、ILSAC ATF規格は幻の規格になってしまったそうです。
もしILSAC ATF規格が誕生していれば、エンジンオイル同様、ATFがもっと分かりやすく、そしてもっと身近なオイルになっていたかもしれません。