皆さんこんにちは!「ケンドルラボ」担当・ケン太です。 某動画投稿サイトを視聴していると、「アフリカで最も有名な日本語は『ETCカードが挿入されていません』である」といった内容の動画がありました。 そう、ETC車載器が発するお馴染みの音声です。 アフリカ在住経験のある方が数年前、SNSに投稿した内容が元ネタのようです。 アフリカでは、ETC車載器を搭載したままの日本の中古車が出回っており、現地の人たちが自然に覚えてしまったのだとか。 残念ながら、言葉の意味までは理解されていないようです。
今回のケンドルラボは、「アフリカの中古車事情」ではなく「ETC」に関するお話です。

研究開発のスタートは約30年前。日本の「ETCの歴史」を簡単にご紹介
ETCとは「Electronic Toll Collection System」の略で、日本語では「電子料金収受システム」といいます。 高速道路や有料道路を利用する際に、料金所で停止せずに料金の支払いができるETCの便利さについては、今さら説明する必要はありませんね。 国土交通省の統計によると、ETCの利用率は95.1%(令和6年12月)となっており、暮らしやビジネスに欠かせない社会インフラの一つとして定着しています。
そんなETCの開発が始まったのは、今から約30年前の1994年のこと。 建設省(現在の国土交通省)と道路四公団(日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団)による研究開発からスタート。 翌年度の研究からは民間のグループも参加し、1997年には小田原厚木道路と東京湾アクアラインでの試験運用が実施されました。
1998年から2000年にかけては、仕様・規格を定めつつ、各地の高速道路での試験を実施。 研究開発の開始から7年後の2001年3月、ついに千葉・沖縄地区での一般向けサービスが開始されることに。 7月には東京・大阪・名古屋の三大都市圏の一部でもサービスが開始され、いよいよ11月に日本全国に展開。 研究開始からちょうど10年となる2004年、高速道路のすべての料金所でETCの整備が完了したのです。
現在、道路とクルマが双方向通信を行う「ETC2.0」の普及が進んでいます。 ETC2.0は従来の料金収受の役割だけではなく、道路交通情報や災害・危機管理情報などの安全運転支援のほか、周辺の観光情報などの受信、料金の割引といったサービスも受けられる優れもの。 現時点でのETC2.0の利用率は36.2%(令和6年12月)ですが、各種サービスの充実・進化にあわせて、利用率も伸びていくでしょう。
「車載器エラー」や「カード未挿入」等でETCレーンを通過してしまったら?
ご存知の通りETCレーンには「開閉バー」が設置されていますが、開閉バーに接触するクルマは私たちの想像以上に多いようです。 じつは私も、ETCレーンで路側表示器が「通行可」にも関わらず、開閉バーは閉まったまま。 気が付けばクルマは開閉バーと接触し、開閉バーは折れて飛んでいった…というトラブルを経験したことがあります。
そのとき、開閉バーははじめから折れるように作られていたため、クルマは無傷。 双方のダメージを最小限にするよう、作り手側も考えているんだなぁと感心しました。 もともと、開閉バーの素材はプラスチックなどでしたが、接触が起こると開閉バーが壊れて交換が必要になったり、クルマにキズがついたりしていました。 そのため、近年の開閉バーの素材は、発泡スチロールやポリウレタン、ビニールなどが主流になっているそうです。
さて、また別の機会に高速道路を利用したときのこと。 いつも通りETCレーンに進入すると、路側表示器に「STOP停車」と表示されました。 ETCレーンの開閉バーは開いており、後続車の姿も見えていたため、そのままゲートを通過して走行。 目的地に到着したところで、高速道路会社のお客様センターに問い合わせてみました。
担当者の方から、通行した日時、利用区間、ETCカード番号、有効期限、車種(ナンバーと色も)等の質問がありました。 申告内容に相違ないことが確認できれば「通常料金でOK」とのこと。 ETCの利用履歴を確認すると、たしかに通常の料金が記録されており、ホッとしました。 なぜ通信エラー(?)が起こったのかは分からないままですが…。
ETCレーンを通過する際に「開閉バーが閉まっていたが通過した」「車載器に不具合が発生した」「ETCカードの挿入を忘れていた」などのトラブルが起こった場合は、ETCレーンや路肩に停車したりせず、ひとまず落ち着いて走行しましょう。 そのようなケースでの対応については、阪神高速のホームページにある下記の内容が参考になるでしょう。
「ETCカードを車載器に挿し忘れてご走行されてしまった場合や、料金所に気づかず通過してしまった場合など、通行料金をお支払いできなかった場合は、そのまま目的地までご走行ください。その後、安全な場所から下記のいずれかの方法で通行料金をお支払いください」
ただし、そのままにしていると「不正通行」と見なされ、割増料金を請求される可能性があるとのこと。 高速道路会社によって支払い方法は異なるようですが、まずは利用した高速道路会社に問い合わせるのがベストな選択肢だと思います。
ETC車載器の買い替えが必要に?ETCの「2022年問題」と「2030年問題」
「2022年問題」の発端となったのは、2005年12月の「電波法改正」です。 ETCの車載器と料金所の間では、5.8GHz帯の電波を使って通信を行っています。 ところが、通信時に5.8GHz以外の帯域の不要な電波も同時に発射されています。 この不要な電波を「スプリアス」といいます。 スプリアスは他の通信機器に影響を与える電波障害の原因となるため、電波法改正によってその許容値が厳しくなったのです。
新規格は2007年12月から適用となり、2007年以前に製造された機器の使用については猶予期間が設けられ「2022年11月末までは使用可能」とされました。 そんな中、新型コロナウイルスの発生によって設備の更新に遅れが生じたことから、猶予期間は現在まで続いています。 猶予期間が終了して使用不可となる対象機種は極めて少ないそうですが、気になる方はETC車載器の型式登録番号とメーカーのホームページなどから確認してみましょう。 なお、猶予期間終了後に対象機種でETCを利用すると「電波法違反」となります。
もう一つの「2030年問題」とは、ETCのセキュリティ向上を目的とした規格変更によって起こる問題です。 サイバー攻撃などから決済情報を保護する新たなセキュリティ規格はすでに決定しており、新規格に対応するETC車載器も発売されています。 規格の変更後は、新規格対応のETC車載器でなければゲートを通過することはできなくなります。
2030年問題でややこしいのは、規格変更が行われる時期が「2030年頃までに」とされており「具体的な変更時期が未定」であることです。 ただし、セキュリティ向上を目的とした規格変更ですから、国としては「できるだけ早く」と考えているのは間違いないでしょう。 また、2022年問題とは異なり「規格外」として利用できなくなるETC車載器が多くなるため、2030年問題の情報については気にかけておくことをオススメします。