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執筆者の写真Kendall Lab

DCTフルードとは、どんな種類のオイル?エンジンオイルのような規格がある?

皆さんこんにちは!「ケンドルラボ」担当・ケン太です。

年に一度の健康診断に行ってきました。健康診断の項目に血液検査がありますが、小さい頃から採血が大の苦手です。

というのも、両腕とも採血に適した血管が分かりづらく、看護師さんを困らせてしまうからです。

今回は最終的に手の甲からの採血となりましたが、検査の結果については「とくに問題なし」で一安心。医師からの「健康そうですが、メタボなので気を付けて」のひと言が心に沁みました…。


今回のケンドルラボも、前回に引き続きDCT(デュアルクラッチトランスミッション)に関する話題です。DCTの種類とDCTの制御に必要なオイル・フルードに関するお話を、出張中のケン太に代わって上司が担当してくれます。




DCT(デュアルクラッチトランスミッション)は大別して2種類に分けることができる


DCTは大きく「湿式タイプ」と「乾式タイプ」の2種類に分類することができます。湿式と乾式の違いは、「クラッチ部位にオイルがあるかどうか」で判断します。

「乾式DCT」とは、その名の通り乾いているクラッチ(オイルやフルードが不要)で、おもに低排気量車に採用されています。


たとえば、1.2L VWのザ・ビートル(7速DSG)等がそれに当たります。

クラッチ、トランスミッション、メカトロ(油圧制御部)はそれぞれ別々の箱に収められており、トランスミッションにはDCTフルードを必要とします。

ここでいうDCTフルードとは、一部ATFを採用しているものもあるようですが、その多くはクラッチに対する油の要求特性がないため、MT(マニュアルトランスミッション)用ギアオイルのことです。

ただし、粘度は低粘度(SAE75W80やSAE75W)仕様になります。


一方の湿式DCTですが、おもに中・高排気量車がメインターゲットとなり、クラッチ、トランスミッション、メカトロ(油圧制御部)が1つの箱に収められた構造をしたものがほとんどです。

たとえば、2.0L VolvoのV60(6速MPS6)や2.0L AudiのA5(7速S-Tronic)等がそれに当たります。こちらの箱にもDCTフルードが必要ですが、ここでいうDCTフルードとは、ズバリATFの派生品です。

一般MT用ギアオイルは、湿式DCTには使用できません。



DCTフルードに「世界共通規格」はありません


以前、Kendallラボの中で、CVTは日本勢(日系自動車メーカー)のお家芸であるにもかかわらず、その技術の根幹はアメリカ勢(米国自動車メーカーおよび米国系部品メーカー)に牛耳られていること。

そして、日本勢がアメリカ勢の許可なく、CVTフルードを日本で規格化することはできないことはご説明しました。それと同じ理由で、DCTは欧州勢(欧州自動車メーカー等)のお家芸ではありますが、彼等がDCTフルードの規格化に動くことはありません。


DCTフルードとは、DCT本体を構成する部品の1つです。

DCT本体並びにDCTフルード、とくに湿式DCTシステムについては、アメリカ勢の影響を大きく受けているということが、以下の状況からも容易に説明がつきます。


2003年、事実上、乗用車DCTの量産化の始まりとしてドイツのVWゴルフR32に搭載された湿式6速DCT(DSG)ですが、実はアメリカの自動車部品メーカーである「Borg Warner(ボルグワーナー)社」のクラッチ特許技術が使われていたのです。


DCTを製造するメーカーとして、アウディ(S-Tronic/湿式)、BMW(M-DCT/湿式)、フェラーリ(F-1 DCT/湿式)、メルセデスベンツ(7G-DCT/湿式)、ボルボ (Power Shift/湿式)など、数多くの欧州自動車メーカーへ湿式DCTを供給しているドイツのゲトラグ社はもちろん、PDK(湿式)をポルシェへ供給しているドイツのZF社などもボルグワーナー社のクラッチ特許技術を採用しています。


ちなみに、ドイツのゲトラグ社ですが、現在はカナダのマグナインターナショナル社が所有しています。

じつは、ゲトラグ社は長年にわたって、欧州FORD(フォード)社の傘下にあったことをご存知でしたでしょうか。


その他、あまりメジャーではありませんが、マセラティMC20など、スーパーカー向けに湿式DCTを供給しているメキシコの「TREMEC(トレメック)Corp.」というトランスミッションメーカーなどもありますが、当然ながら彼等もボルグワーナー社のクラッチ特許技術を採用しています。

一見、アメリカ勢とは関係ないように見えますが、よくよく調べてみると、元々はアメリカ旧ビッグ3のために設立された会社であることがわかります。


「Borg Warner(ボルグワーナー)社」と「FORD(フォード)社」といえば、知る人ぞ知る、その昔「GM(ゼネラルモーターズ)社」と「Chrysler(クライスラー)社」と共に、AT並びにATFの分野で世界特許網を築きあげ、クロスライセンスを締結し、この分野で世界市場をほしいままにしてきたアメリカ勢4社のうちの2社です。この分野では昔も今も、アメリカ勢が圧倒的優位であることに変わりはないようです。



湿式DCTにマッチするケンドル(Kendall)の製品はどれ?


繰り返しますが、湿式DCTフルードとはATFの派生品です。

とくに、クラッチに対する摩擦特性が重要なポイントになります。そこで、私たちケンドルでは耐ジャダー性能に優れ、ワイドレンジに使える「Kendall VersaTrans LV ATF」を推奨しています。

すでに数多くの湿式DCT搭載車に使用実績があり、最近ではさまざまな輸入車を取り扱う中古車販売店やメルセデスベンツ専門店などでも採用いただいており、大変な好評を得ています。

Kendall VersaTrans LV ATF」の詳細は、ケンドルのホームページをご参照ください。


湿式DCTシステムでは、1つのDCTフルード(ATF)でトランスミッション、クラッチ、メカトロ(油圧制御部)をカバーしなければならないため、湿式DCTフルード(ATF)が消耗してしまうと、あちらこちらに支障が出てしまいます。

とくに、クラッチに対する摩擦特性が低下すると、ジャダー(車体振動)の発生に繋がってしまうのです。


乾式DCTフルード(ギアオイル)の定期交換については無頓着でも構いませんが、湿式DCTフルード(ATF)は必ず定期交換(4万km毎または2年毎を推奨)を行う必要があることをお忘れなく。


 

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