皆さんこんにちは!Kendallラボ担当・ケン太です。
昨夏のKendallラボで「現在の愛車は9台目です」などと書いていましたが、気が付けば11台目のクルマに乗っています。
ちなみに、11台のうち4台がAT車、4台が2ペダルMT車、3台がCVT車です。できれば、大好きな2ペダルMT車の魅力を語りたいのですが・・・
今回のテーマは「意外と知られていないCVT(無段変速機)とCVTフルードのお話」です。
今や日本はCVTを搭載するクルマの台数が世界一であることから、CVTは日本特有の技術だと思っている方も多いのでは?
じつは、CVTはオランダ生まれなのです。
そうした背景もあり、かつて私の先輩はオランダ・アイントホーヘンで開催されるCVT会議へ出席するなど、欧州への出張も多かったようです。
世界最古のCVT(バリオマチック)を搭載するクルマも、同じ街にあるDAF(ダフ)社の博物館に展示されていたそうです。写真は1958年製のDAF600です。
私も機会があれば行ってみたいと思います。
「CVTフルード」と「ATF」は別モノ?同じモノ?
CVTの歴史は古く、話せば長くなるので割愛しますが、「スバル(旧富士重工)」がオランダの開発元で特許を有する「ファンドーネ社(現・ボッシュグループ)」から金属ベルト式CVTユニットを輸入し、1987年「スバル・ジャスティ」に搭載したのが量産化の始まりだといわれています。
このCVTは電子制御を意識したElectroの「E」を取ってECVTと名付けられました。
当時、金属ベルト式CVTの開発・設計に使用されていた油は、以前にもKendallラボでご紹介したことがある米国ゼネラルモーターズ社の「DEXRON」規格のATF(オートマオイル)がベースとなっていました。
巷ではCVTフルードとATFは「まったく別の油」であると考えている方も少なくありません。
しかし、CVTフルードはATFの派生品であり、ATFの一つでもあるのです。原材料も「ベースオイル」「添加剤」「ポリマー」の三要素から構成され、共に同じ粘度範囲に属する作動油です。
市場には、自動車メーカーの純正CVTフルード以外にも、オイルメーカーから数多くのCVTフルードが販売されていますが、それらの容器上の表記やカタログをよく見てください。オイルの規格を謳っている製品は一つもありません。
では、一体彼らは何を基準(根拠)にそれらの作動油をCVTフルードとして販売しているのでしょう?
そこに疑問を感じ、さらにその理由を知っているとすれば、あなたはプロ中のプロに違いありません。
CVT車が多い日本で、CVTフルードの規格化ができない理由
今日現在、CVTフルードを評価する試験方法は確立されています。しかし、CVTフルードの世界共通(標準)規格は存在していません。
それならば、CVTに優位性のある日本勢、つまり日本自動車技術会(JSAE)が音頭を取って「JASO ATF」を規格化したように、CVTフルードもJASOで規格化すればいいのでは?と考える方もいらっしゃると思います。
もちろん、日本自動車技術会(JSAE)も規格化したいのだと思います。しかし、アメリカ勢がCVTフルードをJASOで規格化することを認めてくれないらしいのです。
「JASO ATF」の規格化のときは、ほぼ「DEXRON/MERCON」規格に準じたものを作ることでアメリカ勢の同意が得られたようですが、CVTフルードについてはJASOで規格化することに反対されてしまったとのこと。
このことが、待てど暮らせどCVTフルードがJASOで規格化されていない理由であるようです。
今後もCVTフルードがJASOで規格化される可能性は限りなくゼロに近いといわれています。
さて、ここで言う「アメリカ勢」とは、端的にいえば、GM(ゼネラルモーターズ)社とFORD(フォード)社等です。一般の方にとっては、「アメ車なんて、日本ではほとんど走っていないし・・・」「アメリカではCVT車も少なく、アメリカ勢とCVTは全く関係がないし・・・」そんなふうに映っているかもしれません。
しかし、知る人ぞ知るATFやCVTフルード技術の根幹は、昔からアメリカ勢に牛耳られているのが実情です。特許の問題などもあり、フルード技術で日本勢がアメリカ勢を超えることはまず不可能です。
また、日本の自動車メーカーがクルマの販売で最も収益を上げている国はどこでしょう?
もちろん、アメリカ市場ですね。
こうした状況は、政治における日米関係と酷似しており、日本勢がアメリカ勢の意向を無視して独自路線を走ることは非常に難しいのだろうと思います。