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執筆者の写真Kendall Lab

オートマオイル(ATF)の低粘度化について

皆さんこんにちは!Kendallラボ担当・ケン太です。

3月も半ばにさしかかり、「桜の開花」「お花見」などの春らしい話題に触れる季節になりました。

そしてまた少しずつ、「ドライブ欲」が高まりつつあります。

今月中には春のお花見ドライブに備えて、愛車のオイル交換を済ませておこうと思います。


さて、今回のKendallラボは、久しぶりにオートマオイル(以下、ATF)に関するお話です。

より高い燃費性能、環境性能のクルマが求められる時代、ATFの低粘度化が進んでいますが、この流れの先にはどんな未来が待っているのでしょうか?




エンジンオイルと同様に、低粘度化が進んでいるATF

以前のKendallラボの中でもお話しましたが、最近のATFはオートマチックトランスミッション(以下、AT)の進化に伴い、省燃費を強く意識したスペックとなっており、エンジンオイル同様、低粘度化が進んでいます。


とくにメルセデスベンツでは、早くから低粘度は低粘度でも「超」が付くほどの低粘度ATFを積極的に採用してきました。

標準的なATFの動粘度が「7.0 cSt(@100℃)」以上あるのに対し、「超」低粘度ATFの動粘度は、代表性状値で「4.5 cSt(@100℃)」と非常に低い設定となっています。


当初、メルセデスベンツ以外の自動車メーカーでは、「さすがにこの粘度は薄すぎるのではないか?」「焼付きを起こすのではないか?」などと疑問視され、躊躇する技術者が多い中、そこはさすがメルセデス。

データと実績を積み重ね、「超」低粘度ATFを7速AT(7G-Tronic Plus)以上の多段化ATの分野で見事に定着させました。最近になってようやく他の自動車メーカーも追随し、「超」低粘度ATFを採用する車種が少しずつ増えつつあります。


アメリカのケンドルにおいても「Kendall DEXRON-ULV ATF」という製品が既に開発されています。

製品名にある「ULV」とは、「Ultra(超)」「Low Viscosity(低粘度)」の略です。現時点では、工場向けの初期充填用のみが用意されており、一般販売はまだ行われていません。

「Kendall DEXRON- ULV ATF」については、一般販売が開始されましたら、日本でもラインナップする予定にしています。



カーボンニュートラルの時代に向かって、ATFはどうなる?

では、今後もATFは更に低粘度化に向かうのでしょうか?

いいえ。それはまず考えられません。その理由の一つとして、現行の「超」低粘度ATFをさらに低粘度化させた場合、逆に燃費が悪化してしまうことが判っているためです。


さらなる低粘度化が考えにくいもう一つの理由は、脱炭素・環境問題の観点から電気自動車(EV)への移行が加速し、近い将来オートマチックトランスミッション(AT)そのものが要らなくなるという厳しい業界事情があるからです。


すでに、将来需要の減少は確実です。にもかかわらず、10年後を見据えてさらに「10速AT以上の多段化AT」を新開発しようとするミッションメーカーは、なかなか現れないのではないでしょうか。

オイルメーカーも置かれている立場は同じです。


ちなみに、世界各国で実用化しているEVの駆動系システムは、湿式クラッチ付もありますが、「E-アクスル」と呼ばれる「モーター」、「減速機」、「インバーター」の3要素から構成されるユニットが主流となっています。

減速機のギア保護、モーターの冷却などを目的とするATFに類似した油は必要とされますが、トランスミッション(AT)はありませんので、純粋なATFは必要とされなくなってしまいます。


EVへの移行が加速すると、エンジンもありませんのでエンジンオイルも必要とされません。

私たちオイル業界も15年後、20年後は一体どうなっていることやら・・・それを考えると頭が痛くなってきます。


最後は少々暗いお話となってしまいましたが、エンジンオイルやATFの情報をはじめ、業界の裏情報も可能な限りアップしていきますので、引き続きKendallラボをよろしくお願いします!

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